Prologue

 ぼくの言葉はまだまだ未熟で、空っ風のなかで身を竦めている。ここは薄暗くて肌寒い。しかし、一から取り掛かるにはおあつらえ向きの場所だろう。お約束事のコードを共有しながら盲目の庭で戯れる人々のなかで、たえず心理的負債を抱えていたぼくだったけれど、今はきっぱりと別れを告げることができる。さしあたってぼくは対象への愛を、在りし日の回想を、つらなる日々を語り続けるだろう。そして、何かを手繰り寄せていこうとするドキュメントは、そのまま一本の地平に収斂していくはずだ。ぼくはぼく自身の動力となって、物語を創造する。そして、それが、あなたの胸のうちに引っ掛かりのようなものとなれば、なお嬉しい。ぼくは、他ならぬ「あなた」に語りかけることを忘れない。