JOHN COLTRANE / Selflessness featuring My Favorite Things

セルフレスネス・フィーチャリング・マイ・フェイヴァリット・シングス
 震えた。戦慄に近い感動があった。『My Favorite Things』を聴く際に込み上げるのは、そのような感情だ。一切の妥協を許さないプレイヤー達による演奏は、即興のなか互いの音でもって呼応しあいながら、何かを手繰り寄せようとする土臭い葛藤のドキュメントそのものである。息を呑む、と言うより他がない。限りない緊張と解放、旋律の解体と再構築を繰り返しながら高らかに響き渡るコルトレーンの鋭いサックスは、安全な位置に立つ自分を挑発し、八つ裂きにする。強烈な問いかけ。答えるまえに、足を一歩踏み出しているような。コルトレーンは、本当にかっこいい。
 ライブ演奏には一回性の価値のようなものがあると僕は思うけれども、今から40年も前のこんな素晴らしい演奏が手元で聴けてしまう邂逅を、素直に感謝したくなるアルバムである。